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「温故集」にみる大洲藩主と家臣25 神山兵左衛門家の出世 [温故集]

 別家を立てた市郎兵衛の長男兵左衛門正英家は、本家を超えて出世していく。初代兵左衛門正英は、泰興の代、慶安2年(1649)近習となり、万治元年(1658)讃岐の丸亀在番の際に、丸亀において新知100石を拝領している。丸亀在番とは、泰興が丸亀藩主山崎治頼の城地没収につき、幕府から在番を命ぜられたものである。明暦3年(1657)の4月16日大洲を出発し、18日丸亀に到着、翌年夏に、丸亀城を京極高和に引き渡して帰城した。先にみた寺嶋家では、この丸亀在番で知行減少しているが、増加した事例もあった。その後加恩100石があり、御用人役となる。泰興が延宝2年(1674)に隠居するが、隠居料の内から100石拝領し計300石となった。延宝5年閏12月泰興が死去した翌年、息子兵左衛門正春に家督を譲っている。泰興により取り立てられ、泰興の死去とともに隠居しており、拝領高から考えても、泰興との関係が深い人物であったといえる。
 2代兵左衛門正春は、延宝6年本知200石を拝領しており、初代兵左衛門が泰興の隠居料から拝領した100石は含まれていない。宝永7年(1710)目附役、享保元年(1716)町奉行、同5年用人役徒小性支配、同14年持筒組御預となる。元文3年(1738)隠居し、息子の兵左衛門正恭が別に拝領した15人扶持を隠居料として改めて拝領した。
 3代兵左衛門正恭は、享保14年部屋住から手廻となり15人扶持を拝領し、元文3年家督相続した。寛保元年(1741)年目付役、延享3年(1746)用人役徒小姓支配、寛延3年(1750)普請奉行となる。2代兵左衛門と同様の役職である。宝暦4年(1754)には、泰温遺腹の男子として延享2年大洲に生まれた富之助(泰武)の部屋住の御守となった。富之助は宝暦2年に中の丸へ引っ越しており部屋住となっていた。同6年には御守が御免となり、用人に戻り持筒組御預となる。
 4代勘四郎正家は、宝暦9年相続したが、幼年であり25人扶持となった。明和3年(1766)近習となり、袖留の儀を行うよう指示があった。袖留とは、江戸時代、男子の元服、女子の成人に達したときに振袖を普通の袖の長さにとどめることであり、通常男子は15歳、女子は18歳に行った。ただし男子は13歳のとき半元服があり、袖留はこの行事の一つともされる(『国史大事典』吉川弘文館)。先の富之助も13歳で袖留をしており、この勘四郎については近習となるにあたり、わざわざ袖留を命ぜられたということは、通常より若かったが職務上必要があったため実施したとも考えられる。そのためまだ幼年なので江戸参勤は御免となっている。安永5年(1776)新知150石拝領し、同9年手廻、天明6年(1786)大目附役、寛政元年(1789)大目附役を御免、同4年50石加増され、兵左衛門家の拝領高に戻った。
 5代久弥正身は、寛政10年亡父の跡式を相続し25人扶持を拝領、文化5年(1808)側勤となっている。
 3代兵左衛門の弟佐太夫正房は、延享3年側勤として新たに召し出され、4人扶持15石給人格となった。これは泰武が兵左衛門に弟がいると聞いて新規召し抱えしたものであった。寛延3年納戸勤、宝暦2年手廻、その後納戸再勤となったが、不幸があり断絶したとある。つぎの泰行の代に佐太夫の名跡を継がせるために、口分田羽右衛門弟を養子として2代神山来助とし、4人扶持15石を与えた。中小性、納戸勤となったが、明和7年同じく不幸のため家が断絶したとある。
 この他、神山家は泰興の代に150石で召し抱えられた神山長左衛門正信家がある。生国は不詳で、一柳監物の家より出たとある。一柳監物は寛文5年(1665)に改易された西条藩一柳直盛と考えられる。この長左衛門家は2代覚平家祐以降100石となり6代続いている。しかし3代長左衛門正兜が側勤と納戸、6代長左衛門正明が定府勤とある以外、職務の詳細を記していない家系である。 これまでみてきたように、神山7家を総計すると1000石20人扶持となる。それは神山彦太夫の3人の息子、神山市郎兵衛の2人の息子と、兄弟の分知によって石高を増やしていった。しかしいずれも順調に継承されたわけではなく、神山覚内家のように郡・河田家と交互に養子を行いつながった家もあった。また市郎兵衛家は弟文右衛門家が継いで、兄兵左衛門は別家を立てた。兵左衛門の弟左兵衛は新規取り立てとなったが断絶するなど、家の継承には一つの法則性があるのではなく、相続の時期、兄弟の人数、藩主との関係などが要因となっている。

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